12月29日（木）【恋の罪】
　不倫相手とのセックス中に呼び出された女性刑事和子は渋谷で起きた猟奇殺人事件の調査に当たる。日常に虚しさを抱いていた人気小説家の妻いずみは、だまされてAVに出演したことから、心身ともに解放されていく。渋谷で出会った夜は売春婦、昼は大学助教授という美津子に導かれて、売春をするようになり……。
　園子温監督が東電OL殺人事件を題材に、生きている実感を求めてセックスにのめり込んでいく三人の女性を描く。尋常ではない世界を描いているようだけど、実は「生きていることの意味を感じたい」という普遍的な欲求をストレートに描いている映画。カフカの『城』や田村隆一の詩『帰途』の引用は、何だか70年代のような強烈さ。いずみの神楽坂恵、美津子の冨樫真の演技は、壮絶。肉体そのものが言葉になっていくような、映画のテーマをそのまんま血肉と化したようです。美津子の母（大方斐紗子）の狂気も凄まじいばかり。すごい映画を見た、という久々の実感が湧きました。

12月28日（水）【赤い影】(DVD)
　娘を水の事故で亡くした夫婦、ジョンとローラは仕事でヴェニスにやってくる。霊能者だという盲目の女性にローラは傾倒するが、ジョンは危険を告げられても信じない。息子の怪我でヴェニスを去ったはずのローラの姿をジョンは見かけて……。
　印象的な視覚イメージを連ねたオカルト・サスペンス。冒頭の赤いレインコート、水、割れるガラスのイメージが、水の都ヴェニスの迷宮のような映像の中でも、随所で繰り返され、もやもやとした暗示的効果で不安感とサスペンスを盛り上げていく様は、秀逸。謎は謎を呼んで、最後まで惹きつけられるんだけど、ああ、でもあのオチは？　うーんという感じなんだけど、まあ、そこに至るまでの視覚的断片的イメージをパズルのようにカチッと完成させるというところが主眼なので、いいのかしら。ローラのジュリー・クリスティは魅力的。ジョンのドナルド・サザーランドとの、リアルで激しいセックス・シーンは、何かびっくりしました。ニコラス・ローグ監督、1973年の作品。

12月20日（火）【人形佐七捕物帖　妖艶六死美人】(DVD)
　水戸黄門の最終回を見たら、何かあんまりだったので、古い時代劇を見返してみました。台詞回しや役者の動きとか、限りなく舞台劇に近い感じ。謎解きは無理無理だけど、リアルな？江戸時代を感じられて楽しい。詳しくはこちら。

12月16日（土）【世界で一番好きな人】(DVD)
　プレイボーイの青年医師ステファンのところに、12歳の家出少女エヴァが転がり込む。奔放かつ無邪気なエヴァにステファンは翻弄されるが、実はエヴァはステファンの患者だった……。
　明るく楽しいフレンチ・ロリータ純愛映画。ジュリア・マラヴァルちゃん演ずるエヴァは、鼻とあごがとんがった、いかにも西洋人という美貌ですが、くるくる変わる表情がすごく魅力的。大人顔負けの会話でステファンを煙に巻いて、もうしっかり女です。フランス映画は会話がお洒落でよいなあ。海で下着で泳ぐサービス付き。女と見れば口説きまくっているプレイボーイのステファンが、少女の純愛の虜になっていく様は、美しいファンタジー。ラストの大人になったエヴァが違う女優になっちゃうのはちと残念だけど、ハッピーエンドだから、いいか。1995年の作品。監督のアレクサンドル・アルカディは、調べてみたら、何と『ピラニア3D』などのホラー映画監督アレクサンドル・アジャのお父さんなのでした。びっくり。

12月12日（月）【ロボ・ジョックス】(DVD)
『リアル・スティール』を見たので、これを見返してみました。世界初の巨大ロボット実写映画。着ぐるみ、モデル・アニメ、ミニチュアなどを組み合わせた特撮は、CGにはないモノとしての存在感、重量感があって、これはこれで迫力あり。詳しくはこちら。

12月11日（日）【リアル・スティール】
　2020年、人間のボクシングはすたれ、ロボット・ボクシングが人気を集めている。元ボクサーのチャーリーはロボット・ボクシングで日銭を稼ぐ日々。ある日、別れた恋人との間にできた息子を預かるが、息子がゴミ捨て場から発見したロボットアトムは……。
　人生に挫折したダメ親父と捨てられた息子＆捨てられたロボットが、再生する姿を、極めてストレートに（ベタともいう）描く。変にひねらなかったのが正解で、迫力あるロボット・ボクシングのシーンと合わせて、楽しい映画。アトムに「人間的感情」があると、言い切らないあたりはうまいな。ロシア人と日本人が敵で、ダメ白人親子が黒人の助けを得ながら勝利するという構図が、政治的に正しい（笑）のかどうかは、知りませんが。「極悪男子」とか漢字でペインティングした敵ロボットとか、楽しいです。競技場にガンダムもどきやザクもどきのロボットが置いてあったり、主役ロボの名前がアトムなのは、日本製ロボット・アニメへのオマージュなんでしょうね。手足がちぎれるとオイル？が噴き出すのは、マジンガーＺ。CGは完璧な出来栄え。『トランスフォーマー』でも、思ったけど、この技術を使ってもっとマシな話は作れないのかなあ。ショーン・レヴィ監督。なお、原作はリチャード・マシスンです。