４月９日（日）【バスケットケース】(DVD)
　ニューヨークの三流ホテルにやってきた一人の青年は、大きなバスケットケースを抱えていた。青年の部屋からは時折人間のものとは思われない叫び声が聞こえてくる。バスケットケースの中には青年のシャム双生児の兄が入っているのだ。青年は自分たち兄弟を無理やり手術で引き裂いた医師たちを訪ね歩き、復讐を開始する。だが、青年にはガールフレンドができた……。肉塊に顔と腕がついたようなお兄さんは、コマ撮りのアニメーションでカクカクと動きます。足はないけど身軽で怪力、血みどろの殺人を繰り返します。兄弟は精神感応でつながっているので、弟がデートするとお兄さんもモヤモヤした気持ちになって暴れ出してしまいます。お兄さんは若者の性欲の寓意、抑えられない性衝動に悩む青年の青春スプラッタ・ホラー。舞台の安ホテルはすえた臭いが漂ってきそうで売春婦や泥棒が出入り。田舎から都会に出てきて阻害される若者を描いた映画でもありますが、大都会の底辺で暮らす人々への視線はむしろ暖かく、彼らは生き生きと描かれていて、そこら辺はニューヨーク出身の監督の映画ですね。下半身のないお兄さんが、惨殺した女性の血みどろの下腹部に乗ってピストン運動をするシーンは、恐ろしくもあり滑稽でもあり哀しくもあります。異常と正常は表裏一体だということを、そのまんま映像化したフリークス映画の傑作。フランク・ヘネンロッター監督の1982年の作品。

４月８日（土）【生贄夫人】(DVD)
　谷ナオミ主演のSM映画、日活ロマンポルノの一本。秋子夫人は三年前に失踪した夫と再会するが、山の中の廃屋に誘拐されて、あれやこれやと責められる。心中未遂の若いカップルも連れ込まれて、あれやこれやと……。表面的にはSMポルノなんだけど、実は究極の？ロリコン映画。夫の失踪の原因というのは、少女へのワイセツ行為。冒頭で刑事が夫人のところへ聞き込みにきて、夫が誘拐した少女と性行為を続けていたということが語られてびっくり。山中の廃屋というのは、夫が少女とそういう暮らしをしていたところなのでした。何を思って夫が少女を手放して婦人を誘拐したのかは明白には語られないんだけど、SMの果てに夫人は夫への愛を取り戻す。でも「縛って」と迫る夫人から、夫は逃げ出して、何と再会した少女と手に手を取って消えていくのでした。なお、少女は赤いスカートの小学校低学年です。夫役の坂本長利の虚無的な表情がとても印象的。どこまでも逃げ続ける男の映画ですね。廃屋や山中での緊縛SMは絵に描いたように美しい。心中未遂の少女役で東てる美がデヴュー。全身を縛りあっての二度目の心中というのも、すごい絵です。1974年、小沼勝監督。

４月８日（土）【フリークス】(DVD)
『魔人ドラキュラ』のトッド・ブラウニング監督の“禁断”の作品。本物のフリークス（小人症やシャム双生児、手足のない人などの本当の身体障害者）が大挙出演していて、1932年に公開されて大騒ぎ、トッド・ブラウニングの監督生命はこれでお仕舞になったという代物。舞台はサーカス、小人の男は同じく小人の女性と婚約中なんだけど、空中ブランコ乗りの美女に夢中になって、騙されているという婚約者の忠告も聞かずに貢ぐ日々。小人が莫大な遺産を相続したということを知ったブランコ乗りは、彼と結婚した上に毒殺しようとするが……。サーカス内でも、気味悪がられ、笑い者にされ、人間扱いされない彼らに注ぐ視線は暖かく、逆にブランコ乗りの美女やその恋人のマッチョ男は，徹底的に醜悪愚劣に描かれており、監督が何を描きたかったかは明白。特に結婚の宴で、「お前も今日から仲間だ」と陽気に歌うフリークスたちを、ブランコ乗りの女がものすごい表情で罵倒するシーンは、凄まじいです。ラストもブラックで素晴らしい。

４月２日（日）【ブレイド２】(DVD)
　ハーフ・ヴァンパイアの吸血ハンターの活躍を描くホラー・アクション第二弾。ギレルモ・デル・トロ監督、2002年の作品。前作で死んだかと思われた相棒（というか父親代わり）の行方を追うブレイドの前に現れたのは、ブレイドを倒すために作られた吸血鬼の特殊部隊。吸血鬼の血を吸うリーパーズという変異体を滅ぼすために、一緒に闘ってくれというのだ……。前作同様のウェズリー・スナイプスの重量級カンフー・アクションとガン・アクションに加え、下顎がばっくり左右に割れて触手のようなものを出して吸血するリーパーズの描写はゲロゲロだし、ぬとぬとぐちゃぐちゃの解剖シーンもあるし、ホラーとしてもパワーアップ。お話も母親との葛藤を描いた前作と対応するように、今回はブレイド、吸血鬼、ともに父親との愛憎劇がテーマで、とっても良くできていて、ラストは感動的。前作では今の目で見るとちょっと安く見えてしまったCGもはるかに出来が向上。吸血鬼特殊部隊の一員でドニー・イェンも出ています。快作。