９月某日【メカゴジラの逆襲】(LD)
　数あるゴジラ映画中、もっともメランコリックな雰囲気の一作。陰鬱と言ってもいい雰囲気が全編を覆う。世間に疎外されたマッド・サイエンティストの暗い復讐談。その暗さが妙に心になじんでしまって、このところ年に一回くらい見返している。オトナになってわかる味わい深い作品です。しかし、公開当時見た子どもたちは、何と思ったんだろうね。

９月某日【エクソシスト】(V)
　実は深夜テレビで何年も前に眠りながら見ただけで、ちゃんと見たことがなかったのだ。眠ってしまったわけがわかった。こんな地味な映画だったのか。やはりこれは、キリスト教が社会に根付いている国の人でないと、ちょっとわからないな、という感じはある。キリスト教という絶対的秩序にひびが入ることの恐怖なんて、わかんないよねえ。悪魔憑きも狐憑きも対して違わないとか思っちゃう。で、印象に残るのは、首が回ったりとか、緑のげろっぱとかだけになっちゃうんだな。音楽がほとんどまったくないというのも、珍しい。ディック・スミスの特殊メイクは今見ても、気色いい。リーガン役のリンダ・ブレアは大熱演。ところで、何で古代イラクの悪霊がアメリカの少女にとり憑かなけりゃならないのかなあ。

９月某日【新サスペリア】(V)
　原題『L'ASSASSINO E ANCORA TRA NOI』('86)。『サスペリア』とは関係ありません。ジャケットの解説によると、殺人者は今もあなたの側にいる、という意味だそうだ。猟奇殺人事件を女子大生が追う話なのだが、最後まで犯人はわからず、「この映画は若者への警告と、関係者の尽力によって、一刻も早く事件が解決されることを願って製作された」というテロップが出る。実話かと思うと、ご丁寧にその後に「この映画は全てフィクションです」というテロップも出る。頭くるくる。単に脚本がオバカで、どうしようもなくて、こうなったのかという気もする。女性の乳房と性器をナイフでえぐり取るシーンがあるけど、性器の方はボカシが入っていて何だかわからないのでした。

９月某日【乙女の祈り】
『エド・ウッド』を見に行ったら、死ぬほど混んでいたのでくじけて、こちらを見た。『ブレイン・デッド』のピーター・ジャクソン監督だけど、スプラッタではない。多感で空想好きな女学生が二人だけの世界に没入していって、親や世間と軋轢が生じて、破滅するというお話。非常におもしろかった。SFやら何やらアレな人は、きっと共感できます。

９月某日【エクソシスト２】(V)
　ジョン・ブアマン監督の超難解ホラー（なのかなあ？）。一作目で悪魔払いの末に死んだ神父の死因を調査に、別の神父がリーガンの元にやってくる。精神を同調させる怪しげな機械を使って彼女の深層心理を探ると、まだ悪霊が巣くっている（らしい）。で、神父はアフリカにとんで悪霊パズズの謎を探る。最後は一作目の屋敷で悪霊と対決……というのが、一応の筋だが、やたら象徴的、暗示的、神秘的なシーンばかりで、何だかわからない。キリスト教徒ならわかる、というものでもないだろうなあ。解説が必要な映画。

９月某日【オーメン】(V)
　昔、ドラキュラやフランケンシュタインこそが正統怪奇映画だと思っていた私は、オカルト映画というのに拒絶反応があって、これも見ていなかった。何となく『エクソシスト』とセットみたいな感じのあるこの作品だけど、実は全然違っていて、こちらは安手の通俗ホラーです。駐英アメリカ大使の息子が、実は悪魔の子で、周囲の人々が次々死んでいって、大使はイタリアやら、イスラエルやらをまわって秘密を探り、息子を殺そうとするが……という話。テレビドラマのような平板で重みのない演出、やたら派手で安っぽい音楽、今となっては避雷針串刺しとかガラスで首ちょんぱとかのショック・シーンもねえ……

９月某日【女囚さそり・第41雑居房】(V)
　梶芽衣子主演の女囚さそりシリーズ第二弾。伊藤俊也監督。エロチック・ヴァイオレンス・アクションを期待したらとんでもない。いかにも70年代という感じの、怨念どろどろ大暗黒映画。さそりと六人の女囚が脱走して、極悪看守たちに復讐しつつ、バスジャックまでして逃げ回るお話。さそりを強姦した看守なんて、股間に丸太を突き立てられて殺されちゃう。女囚たちも半端じゃなくて、逃げ込んだ廃屋で野良犬を見つけると、みんなで襲いかかって、食べちゃう。リーダー格の女囚なんて、亭主に裏切られて、自分の子を殺して、お腹の子まで憎い男の種だからって、腹かっさばいて殺しちゃってる。根底には権力に対する絶対的な不信感と、ものすごい怨念が渦巻いている。非常なインパクトがありました。

９月某日【天守物語】
　歌舞伎の舞台をそのまま撮っているようで、玉三郎ファンでも歌舞伎マニアでもない私には、ちょっとつらいものがあった。最小限の映像で、後は台詞が命みたいな感じだからねえ。宮沢りえ（まだ痩せてない）と書き割りの空は美しかった。客層が普通の映画とは違っていて、小金のありそうなおばさんがたくさん見に来ていた。自主的に扉の前に行列をつくる熱意は不気味でした。

９月某日【エド・ウッド】
　相変わらず長蛇の列だったけど、見て良かった。感涙にむせんでしまった。何も言うことはない。みんな見てくれ。少なくとも、この映画が描いている『プラン９……』の頃までは、エド・ウッドは本当にしあわせな奴だったんだなあ、と思うと、その後の没落をより悲劇的に感じてしまう。ああ……落涙。

９月某日【魔人ドラキュラ】(LD)
　というわけで、ベラ・ルゴシのドラキュラだ。何年も前に上映会があって見たことがあるけど、見直してもやはり、かなり冗漫。特に後半、ドラキュラを追いつめていくサスペンスというものがほとんど感じられない平板な演出でつらい。とはいうものの、ドラキュラ城の素晴らしいセットやルゴシのもってまわった大げさな演技は見物です。

９月某日【機動戦士Ｚガンダム １-３】(V)
　何を今頃と思われるかもしれないが、ビデオ化されたので見てみたら、すっかりはまってしまった。ああ、この暗さと青さ、いいなあ。