５月３日（水）【マニアック2000】(DVD)
　H.G.ルイスの傑作『2000人の狂人』のDVD化。狂人という言葉が使いにくかったのと、去年発売だったので2000でひっかけたんでしょうな、このタイトルは。原題は『2000maniacs』。南北戦争で北軍に虐殺された村人の怨霊が百年後に復活、北部からの旅人を村に誘い込んで、次々に惨殺していく。旅人は六人、村人は全員亡霊で二千人というすごい設定。デジタル・リマスターで画質抜群、抜けるような青空、きらめく金髪、真っ赤なオープンカー、そして真っ赤な鮮血。響き渡る馬鹿陽気なカントリーと村人の嬌声、犠牲者の絶叫、そして虐殺の後の亡霊達の哀感。やはり名作です。みんな、買うんだ！

５月５日（土）【セシル・Ｂ ザ・シネマ・ウォーズ】
　ジョン・ウォーターズの新作は、商業主義、良識主義に堕落したハリウッド映画に、死を賭して闘いを挑む映画テロリスト、セシル・Ｂ・ディメンテッドとその仲間を描くコメディ。落ち目のハリウッド女優を誘拐、脅迫して自分たちの映画に主演させるが、次第次第に彼女も目覚めて？「映画的不正者に死を！」なんてアドリブで叫んじゃう。パトリシア・ハーストの誘拐事件を下敷きにしているわけなんだけど、ハースト自身も出演してたりする。コメディなんだけど、ほんとに映画を愛する大馬鹿者の真摯な魂を、実はマジメに描いていて、落涙。幾つになっても過激派で、丸くならず、皮肉と洒落たユーモアもある。カッコイイやね、ウォーターズ。

５月５日（土）【花様年華】
　60年代の香港、同じアパートに越してきた男と女は、互いの妻と夫が不倫の関係にあるのを知って、いつしか惹かれあっていく……。溜息が出るような美しい映像と、抑えた恋心。場面が変わるごとに衣装替えのマギー・チャンのチャイナ・ドレス姿が、素晴らしく美しい。ほとんどチャイナ・ドレス・フェチ映画。相手役のトニー・レオンもこれまた実に哀愁漂う男前で、カッコイイ。狭い階段、二人の部屋、雨の路地など、意図的に狭く限定された視線と空間、赤が鮮烈な映像も素晴らしい。惹かれあうけど、一線は越えない（らしい）二人の、抑制された、でも熱い恋心も、この歳になるとわかる気がしてきて、いいやねえ。音楽もいいです。つい、サントラ買ってしまった。

５月５日（土）【EKOEKO AZARAK】
　マスコミやそれに踊らされる人々の「魔女狩り」がテーマ。若い男女数人が惨殺されて、一人生き残った黒井ミサが「魔女」に仕立て上げられていくという話で、あまりにも醜い狂気じみたテレビ局の人間たちの描写とか入魂という感じで、力作。主演の加藤夏希は演技は？ですが、美少女ぶりはすごいですね。特に切れ長の大きな目はいいなあ。お友だち役の女の子もキュート。でも、これ、どこが『エコエコアザラク』なのかなあ。私としては、ときに妖艶、ときに残酷な原作初期の黒井ミサをちゃんと映画化してほしいのだが。

５月６日（日）【あの頃ペニー・レインと】
　15歳で「ローリング・ストーン」誌の記事を書いた天才少年ロック評論家の話。弁護士になってほしい母親の願いを振り切って、ツアーに同行して、グルーピーの女の子に恋をする。ロック・スターはほんとはいい奴で、女の子も心の中に孤独を抱えて必死で生きている。ロックンロールと初恋の夢物語。いいなあ。険悪な雰囲気になったバンドの面々が、バスの中で、合唱して心がひとつになるシーンとか、泣けます。

５月６日（日）【死霊の盆踊り】(V)
　数ある怪作ホラーの中でも指折りの一本。ドラキュラみたいな恰好した闇の帝王とやらが月夜の晩に、エルヴァイラみたいな魔女？と狼男とミイラ男を従えて、お墓で、不幸な死に方をした女性を蘇らせて、裸で踊らせる。次から次へと世界の国々のいろんな扮装の女性（でもすぐ脱いじゃうんで意味がない）が出てきて、延々、おっぱいとおしりを震わせて妙なダンスを踊り続ける。最初のうちは、一応ホラーっぽく？怪しい音楽と怪しい振り付けなんだけど、だんだん、ただのヌード・ダンス・ショーになっちゃうんだよね。90分間ずーとそれだけ。ひたすらヌード・ダンサーの女の子達が踊り続ける。これ、実はホラー映画じゃなくて、ホラー風味のヌード映画なわけなんだけど、それにしてもこれでは退屈を通り越して、頭がクラクラしてくる。一応事故で迷い込んだカップルが捕まったりするんだけど、彼らも縛られて、延々、これを見せ続けられる。裸の女性は、私、好きなんですが（笑）、さすがに、げっぷが出そうな気になりました。まあ、いろんなおっぱいがあるなあという勉強？にはなるかもしれない。誰にもおすすめしません。

５月12日（土）【アメリカン・サイコ】
　時はバブル景気に浮かれる80年代後半、いかに（仲間より）お洒落な名刺をつくるか、いかに（仲間を出し抜いて）流行りの高級レストランの予約を取れるか、が人生最大の悩み事であるヤッピーの青年が、虚飾だけの生活に耐えられなくなって、殺人鬼になっていく。仲間との名刺比べのシーン（紙質やフォントが問題だ！）とか、やけに深刻な音楽が流れて、主人公が「負けた！」と思って蒼白になったり、ほとんどギャグとしか思えないのだが、彼の生き方と壊れ方というのは、今や、日本でも非常に多くの人々を覆い尽くしているよなあと思うと、非常に恐ろしい映画でした。主人公は一応苦悩して、弁護士に告解の電話とかしたりするんだけど、彼の猟奇殺人が現実なのか、妄想なのか、映画は明らかにしない。主人公は懺悔することによる解放すら奪われて、無限地獄のまま映画は終わる。永遠に続く、モノに踊らされる欲望と優越感と焦燥感の地獄。すごくイヤだけど、いい映画なんで、みんな見よう。

５月14日（月）【アラブ女収容所 悪魔のハーレム】(DVD)
　ダイアン・ソーン主演のイルサ・シリーズ。アラブの産油国のハーレムのお話し。調教と拷問とセックスとアクション。おっぱいの大きなきれいな女性がいっぱい出てきて楽しいのですが（もうげっぷはおさまった）、イルサの配下の双子でレズ（らしい）凶暴な女戦士が、妙にカッコイイ。いつもは服着ているんだけど、闘うときは、なぜか裸でおっぱいをぷるんぷるんさせながら、闘います。顔はそっくりなんだけど、体型はけっこう違う。特におっぱい（笑）。片方の人は、細身で引き締まった体つきで、出るとこは出てて、ほんとに美しい裸体。シリーズ三作の中では、これが一番映画としても良い出来。

５月20日（日）【淫虐地獄】(DVD)
　ほとんどポルノみたいな邦題だけど、これは71年のイタリアの怪談映画。代々、長女がスクブス（女性の夢魔）になるという呪われた血筋の男爵家のお城に泊まることになった旅行者たちが、妖しい美女に次々に惨殺されていく。若い神学生が、自分の魂と引き替えに、殺された六人の魂を解放してくれと、悪魔と交渉するのだが……。無茶な邦題とは裏腹に、地味目に話はすすんでいきます。お色気も残酷度も今となっては、大したことはないんだけど、淡々とした陰鬱な雰囲気はなかなか良くて、男爵、執事、夢魔、それに悪魔と、みんな一癖ある風貌の役者さんたちが、陰気にじっとりと演じていて、味わいがあるます。女優陣もいかにも70年代で、マネキンのような美しさ。

５月27日（日）【悪魔の陵辱】(DVD)
　この邦題何とかならないのか。って、原題も『Nude for Satan』だから、似たような感覚か。自動車事故を起こした女性を助けた男が、助けを求めに入ったお城には怪しげな城主と不気味な執事。男と女は中世風の恰好をしたお互いの分身（それぞれの欲望の寓意らしい）と出会って、あなたを愛してるわと迫られたり、女性の方は、レズられたり、見るからに張りぼての大蜘蛛に襲われたり……。監督はホラー役者から監督に転向した人だそうですが、まあ、自分なりのイメージというか、一種の思い込みはある感じだけど、それを実現する力量はないみたいですね。人間の心の内にある性的妄想というのがテーマらしいです。一番すごいのは、城主が女性の方をじっと凝視すると、初歩的トリック撮影で、パッと女性がヌードになるシーン。さらに、合成の縁見え見えで、城主の瞳の中の女性のヌードが……。74年のイタリア映画でした。